愛宕浜小学校 講演会

平成16年12月2日午前10時より、愛宕浜小学校の研修委員の方々のご協力のもと、「心の声を聴くために〜子どもと親の心の理解とコミュニケーション〜」というテーマにて講演会を行いました。

12月に入り、凛とした冬の寒さが感じられる中、空の青さと小学校からすぐ近くに広がる海の青さに包まれた閑静な住宅地の中にある新しく綺麗な愛宕浜小学校に伺いました。

小学校に着きますと、早くから準備のために来られていた明るく機敏な研修委員の方々のお出迎えを受け、講演会の前にまず校長室にご案内頂きました。

校長室には、中村實校長先生が描かれた愛宕浜小学校の絵が飾ってあり、研修委員の方々をはじめ、子どもたちも居心地のよい校長室の感じが伝わり、私などが幼い時に感じた「〜怖い校長室〜」の雰囲気ではなく、開かれた小学校を中心に地域の方々が一体となっている理想的な学校区である感じを受けました。

また、朗らかで温かいお人柄の校長先生より、「愛宕浜小学校の校区は、新しい街でありながらも、保護者や地域の協力がある地域で、保護者の方々が学校の行事や運営などに意欲的に関って頂いていますね。」というお話をお聞きし、最近の子どもを取り巻く事件への危機感や心の教育についての必要性を感じられての講演会のご依頼であったことが実感でき、保護者の方々が心の理解について高い意識をもっていただいていることを嬉しく思いました。

講演会の時間になり、新しく綺麗な校舎を2階に上がると、受付の方々をはじめ、多くのお母さん方がお越しいただいていました。みなさん、子どもを学校に送り出した後のお忙しい家事の中、少しでも子どもの心を理解したいという思いでご出席いただいている熱心なお母さん方が来られているのだろうと思いながら、子どもたちの心だけではなく、母親の心のサポートや家族全体のサポートにつながるような内容を講演会でお伝えしました。

最初は、参加されていたお母さん方も、少し緊張されている表情の方が多かったようです。やはり、子育て真っ最中で「悩んでいること、困っていること、大変なこと・・・など、たくさんの気持ちを抱えながら、何か今日気づくことや役に立つことがあるのではないか」という思いでいらしたことと思います。

そのような時に大切なことは、一方的な母親へのお説教や、こうあるべきという押し付けではなく、日々の子育ての中で戸惑っているお母さん方の心をやわらかくほぐし、目の前のことで窮屈になりがちな心の視野を広げ、自分や子どもをはじめ、周囲の人の違いやよいところを自然にみることができる心を取り戻すことです。そこで「心と心の握手」というゲームを参加された方全員で行いました。

「心と心の握手」とは、構成的グループ・エンカウンターという集団体験方式の心理教育の中で、最初に参加者全員の心の交流をはかるウォーミングアップとして行うものの一つです。
これは、言葉を交わさずに心を伝えることの難しさを体験するものですが、このゲームを体験する中で、握手をして心を伝え合うことで、みなさんの表情が明るくなり、「キャー!!」という歓声もあがり心がほぐれたようでした。(この時の歓声が他の教室や1階の校長室まで聞こえていたそうです!)

それから、『心の声を聞くためのコミュニケーションスキル』の体験として、言葉の奥にある心の声を聞くための実践を行いました。いくつかの問いかけの中で、その人の気持ちを読み取るスキルを体験するのですが、私たちは忙しい日々の中で、目に見えやすい事柄や結果にばかり注意が向き、その時の気持ちを大切にすることや気づくことすら失くしてしまいがちです。
私たちは、無意識のうちにいろいろな言葉を表現しているのですが、その言葉の意味を理解している時もあれば、理解できないまま心の声として話していることもあります。

大切なのは、その言葉の奥にある気持ちに気づくことです。

私たちが、「あの人は、私のことをよく分かってくれる」「気持ちを共有してくれる心開ける人」と感じる人は、自分の表現できなかった気持ちを汲(く)んでくれる人ではないでしょうか。
いくつかのコミュニケーションスキルの体験から、お母さん方も自分の気持ちに気づいたり、相手の心を理解した言葉を返していただけるようになりました。

体験の次に、「私たちの心の芽生え」として、心の発達と児童期に大切な心のサポートのヒントをお伝えしました。思いやりの心の発達には、母親との愛着関係が基盤となることや、反抗期を乗り越えながら何事にも意欲をもって取り組む心を育てるためは、過保護になり過ぎない親の関わり方が重要であることなどを事例を交えながらお伝えしました。
お母さん方の声の中には、「子育てに関するいろいろな本を読めば読むほどわからなくなります。」「どこかに相談しても、ダメな母親だと言われるようで・・・」というものが多くありました。

最近では、子育てや心理学など、多くの本が出版されていますが、ある1つの例についての内容であったり、どの子どもや母親にも当てはまるものではなかったり、ただただ、母親の不安をあおるものであったり、理論的で難しすぎるものであったり・・と、戸惑われるお母さん方の気持ちがよくわかります。

今回の講演会では、家庭の中心的存在であるお母さんが、やわらかな心であたたかい心の輪を広げていくことが子どもの心の発達のためには何より大切であることと、子育てに一生懸命になることで、見えなくなってしまっている自分の心や周囲の人とのかかわり方や理解をお伝えしたいと思いました。

講演会のはじめより、最後の時は、皆さんの表情が柔らかく温かな印象になっていて、その日から心にゆとりを持って、子どもや自分のもっと素晴らしい一面に気づいていただけるお時間になったのではと思っています。

講演会が終わって、「少し、肩の力を抜いてみてもいいんだ・・・と思えるようになったら、気持ちが楽になりました。今まで何でこんなに辛い気持ちになってしまっていたのかが分かったので、自分自身や周りのことが冷静に見れるようになりました。こんな気持ちでいると、自然と笑顔って出てくるものですね。」という感想も頂きました。

九州メンタルケアセンター  内田奈緒子









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